ハニー・ハニー 「ずいぶんと伸びたね」 ふいに髪の毛を引っ張られ、耳元でそんなことをささやかれたエドワードは、一瞬『びっくり』を絵に描いたような顔で固まった。しかし、金色の一筋を捕まえて指先に絡めながら、楽しそうな笑みを浮かべているロイを見て、呆れたように息を吐き出す。 「……アンタさあ、仕事に飽きたらオレに構うのやめてくれない」 オレは今資料読んでるんだけど。一応、ささやかな文句を言ってみたものの、言ったところで素直に言うことを聞いてくれる男ではない。 「まあ、いいじゃないか、少し休みたまえ。そんな資料、後で適当に目を通せば良かろう」 エドワードの承知している限りでは、今自分が手にしているのは明日の重要な会議の資料であるはずなのだが、それをあろうことか『そんなもの』扱いした上官は、エドワードの抗議などどこ吹く風で、あっさりと手の中の資料を取り上げた。 「コーヒーでも淹れようか。私もずいぶん上手くなったんだよ」 そんなことを言いながら、執務室の隅に置かれたコーヒーメーカーに向かう姿を眺めて、エドワードはまあいいかと苦笑した。 ロイは自分の方が上官のくせに、自らコーヒーを淹れたがる。エドワードがやると言っても、自分がやりたいんだと言って譲らないのだ。前に一度、ロイが淹れたコーヒーをエドワードがおいしいと言ったことを覚えていたようで、最近は良い豆を買ってきては手ずから淹れて、エドワードに飲ませるのだった。 ――君がおいしいと言ってくれると、嬉しくてね。 一度、なんでそんなにこだわるんだと尋ねたエドワードに、ロイはそんな恥ずかしいことを平気で言って、エドワードを一撃で陥落させた。まったく、あんな見たことのないような柔らかな微笑みを浮かべてあんなことを言うなんて、反則だと思う。 |
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