ようこそ中央司令部へ 「た、大将……っ!?」 「当たり」 にやりと笑った生意気そうなその顔は、ハボックのよく知るものだった。金の髪に、同じく金色の瞳を持った、最年少の国家錬金術師。弟みたいに可愛がっていたその少年を見なくなって、もう二年が過ぎていた。身体を取り戻したのだとは上司から聞いたが、悲願を実らせたのち、彼は二度と自分達の前に現れなかったのだ。 「ええええっ!? エドワード君!?」 「ほんとかよ!」 フュリーが少々声を裏返しながら驚愕の悲鳴を上げ、ブレダが掴み掛からん勢いで身を乗り出し、ファルマンが叫びこそしなかったものの、見たことが無いくらいの開眼率で細い眼を見開いている。 「マジで、エドか……?」 自身も信じられない面持ちで、ハボックはほとんど無意識に呟いた。二年ぶりに見る少年は、否、すでに少年と呼べる幼さは無く、今まさに羽化していくような艶やかさがある。背が伸びて顔つきが大人びたせいか、見違えるほどに、そう、『美しい』のだ。 部下達がそろって二の句が継げずに立ちつくしていると、そこに低い声が割って入った。 「少々予定が変わったが、ちょうどいい」 言って、ロイは腕を伸ばしてエドワードを引き寄せて自分の隣に立たせると、長年自分に従ってきた腹心の部下達に告げた。 「紹介しておこう。今日からここで私の補佐として勤めるエドワード・エルリック少佐だ」 『私の』という部分に若干アクセントがあったような気がしないでもないが、気のせいだと思うことにして、エドワードは自らも微笑んだ。 「よろしく」 ふわり。その花が咲くような笑みに、眼を奪われる。一瞬の空白を置いて、ハボック達は慌てて我に返ると、エドワードに歩み寄った。そして一列に並び、びしっと敬礼を決める。 「ジャン・ハボック中尉っス!」 「同じく、ハイマンス・ブレダ中尉」 「ケイン・フュリー准尉ですー」 「ヴァトー・ファルマン。少尉です」 彼ららしい言葉で口々に告げると、大きく息を吸い、声を揃えて。 「よろしくお願いします!」 ぴたり、重なった四重奏に、エドワードは一度目をぱちくりさせると、ついで笑い声をたてた。変わってない、ここのひとたちも。変わらずあたたかで、素敵だ。ちらりとロイに視線をやれば、彼は困ったように肩をすくめた。まったくどこのエレメンタリースクールだ、としかめ面で呟いても、眼が笑っている。 敬礼を解いたハボック達が、わっとエドワードを取り囲んだ。ハボックに頭を掻き回されて、「背が縮む!」と叫ぶエドワードに、どうして二年も連絡しなかったんだよ、身体はもう大丈夫なのか、アルフォンスはどうしてるんだ、等々いきなりの質問攻めである。一人取り残されてなんとなく疎外感を味わっていたロイが、堪忍袋の緒を切らして「いい加減にお前達仕事に戻れ!」と叫ぶまで、彼らは再会の喜びを交わし合った。 じゃあまた後でな、とハボック達が執務室を出て行った途端、扉に張り付いていた野次馬達が一斉に飛び出してきて、「金髪美人の軍人」の正体に興味津々で食いつき、根掘り葉掘り尋ねたのだとか、その者達から、あっという間にマスタング少将の新しい副官はあの『鋼』の錬金術師だとか、はたまた鋼の錬金術師は超絶美人なのだとか、そんな噂が司令部内を飛ぶように駆け抜けたのは、またべつの話。 |
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